10 ways to meet our net zero commitments

ネットゼロカーボン達成に向けた10の取り組み

よりクリーンで持続可能な動力を生み出す必要性は、かつてないほど高まっており、ロールス・ロイスは、この目標達成へ最も貢献できる会社であると自負しています。

国連「Race to Zero」キャンペーンの一環で、2030年までに自社の事業運営において二酸化炭素排出量実質ゼロ(ネットゼロカーボン)の達成を目標に掲げました。さらに、新しい製品やテクノロジーの開発を通じて、2050年までに事業展開する業界でネットゼロカーボン達成を牽引していきます。

また今年中に、ネットゼロカーボンを達成する詳細な道筋について発表しますが、目標達成に向け、すでにテクノロジーを駆使して取り組んでいる10通りの方法をご紹介します。

Trent XWBは、ロールス・ロイス史上最も効率性の高いワイドボディ機エンジンです

1. 効率性向上に向けたあくなき取り組み

革新的なテクノロジーは私たちの生活を大きく変える可能性を秘めている一方で、地道な効率性向上への取り組みが確実に大きな進歩を達成してきました。ロールス・ロイスは製品の効率性向上に絶え間なく取り組み、エンジンのあらゆる部品を精査することで、効率を高められる部分を探し出し、燃費や排出ガスの低減を目指しています。そのほか、エンジンのインテリジェンスを高めることによる環境への負荷の低減にも取り組んでおります。

Trent XWBはAirbus A350に搭載されている、ロールス・ロイスの最も効率性に優れたワイドボディ機エンジンです。これはテクノロジーの改善や軽量部材、過去25年間にTrentエンジンファミリーに対して行った継続的な効率性向上のたまものです。

次世代テンペスト計画向けの推進システムでは新しいテクノロジーを活用します

2. 重量や排出量の低減を目指した次世代テクノロジーの開発

ロールス・ロイスでは、ガスタービンエンジンの継続的な効率向上のほか、効率性を大幅に高めるための革新的なエンジン設計「UltraFan」の開発も進めています。このエンジンは最初のTrentエンジンであるTrent 700と比べて、燃費と排出量が25%削減されます。

現在、最初のUltraFan実証エンジンを製造中で、2021年に英ダービーの当社の最新テストベッドで試験を実施します。エンジンは、英ブリストルにある最先端の複合材テクノロジー施設で製造する軽量複合材のファンブレードやファンケース、現在ドイツで試験中の世界で最も堅牢な航空機用ギアボックスなどのテクノロジーを活用しています。

防衛分野においては、ロールス・ロイスはテンペスト戦闘機計画で重要な役割を担っています。高度な複合材や3Dプリンティング技術を用いることで、軽量で高出力密度のシステムにより高温でも運用可能な動力推進システムを提供します。

このような新しいテクノロジーは、将来の航空機の効率性向上に大きく貢献します。

アーティストが描いた小型モジュール原子炉

3. 小型原子力発電所により低炭素エネルギーをさらに安価で投資可能に

ロールス・ロイスはエンジニアリングや製造、建設会社のコンソーシアムを主導し、小型モジュール原子炉の設計の原則を発電所全体に適用することで、安価な発電所の開発を目指しています。未来の夢物語に聞こえるもしれませんが、原子力発電事業で何十年にもわたって蓄積した独自の技術を活用しています。

各発電所の稼働寿命は60年間で、英リーズ市(人口約80万人)規模の都市に十分電力を供給できる440メガワットの発電が可能です。複数組み合わせて稼働すれば、早くかつ大規模に安価な低炭素エネルギーを作るという困難な課題を解決でき、電気を風力発電程度のコストで作れる可能性があります。

この発電所の設計に対する建設認可を得るためのマッチファンディングの手法などの英国政府の継続的な支援により、ロールス・ロイスは2021年中に工場建設を開始し、発電所建設用モジュールの製造を2024年か2025年に開始し、最初の発電所を2029年に稼働し始める予定です。

当社コンソーシアムの小型原子力発電所が、脱炭素エネルギーシステムのハブとなり、住宅や事業所、学校、病院に電力系統を提供できます。また工業用地への電力供給、陸上物流や航空用のネットゼロで持続可能燃料の生産に使用できる可能性もあります。

ロールス・ロイスの新しいエンジンはすべて、持続可能な航空混合燃料で運用できます

4. 持続可能な燃料の使用を加速

持続可能燃料はエンジンが出す炭素を大幅に削減する可能性を持っています。ロールス・ロイスの大半の航空エンジンでは持続可能で低炭素の混合燃料が使用できます。これを長距離フライトの脱炭素ソリューションの一つと考えています。

しかし持続可能燃料は現状大量生産されていないため、石油ガス会社と連携してより持続可能な燃料の増産へむけた製造のプロセスを開発しています。また小型モジュール原子炉から、合成燃料工場へ電力供給する方法を検討しており、「e-fuel」と呼ばれる電解を通じた合成燃料の生産のため、学術界と協力しています。

また航空と陸上の動力用に水素の活用を検証しています。航空における水素利用には、多くの認証作業を含めたインフラや航空機設計への変更が必要になりますが、短距離フライトの脱炭素ソリューションになる可能性を秘めています。

APUS i-5などの複数の電動実証機の開発を進めています

5. 電動化による持続可能な動力を推進

ロールス・ロイスは、鉄道や中・短距離フライト、船舶、戦闘機などによる炭素排出量を削減し、排出物ゼロを目指して電動化テクノロジーの開発を進めています。また全電動化航空機のACCELの開発を更に進め、来年には世界最速記録の樹立を目指し、そこから将来の電動航空機の開発の知見や専門性を獲得していきます。

当社のmtu Hybrid PowerPacksは、環境に配慮した静かで効率の良い鉄道の新時代を築いています。PowerPacksは英国とアイルランドでの運行に向け2020~2021年に納入を予定しており、鉄道に電力を供給するために必要なすべてのシステムを備え、ディーゼル列車にも対応し最大25パーセントの燃費を削減します(車両やルート、スケジュールにより変動)。

さらにこれまでよりも、移動をより早くクリーンかつ静かに行える、中・短距離用航空機に搭載されるハイブリッド電動化推進システムの試験や、コミューター機に搭載可能性のある推進システムの開発にも取り組んでいます。また効率性向上のため、ガスタービンエンジンへの電動化テクノロジーの導入も強化しています。テンペスト計画の推進システムでは電動化テクノロジーをさらに導入し、航空機の空中への推進力用だけではなく、機内のすべてのシステムに必要な電力も提供します。

ドイツのフリードリヒスハーフェンにある当社パワーシステムズ施設では、マイクログリッドで通常の勤務時間中の3分の1のエネルギーをまかなっています

6. マイクログリッドを使用し、低炭素電力へ移行

マイクログリッドは、地域に電力を供給する送配電網の小型版のようなもので、低炭素電力への移行を支える上で重要な役割を担っており、太陽電池や風力タービン、バッテリー、ディーゼルあるいはガス発電機などのさまざまなエネルギー源に用いられます。

風力や太陽光などの再生可能エネルギーは天候に左右されるため、安定しないことがあります。さまざまなエネルギー源を一つのマイクログリッドに組み合わせることで、エネルギーの継続供給が可能になります。停電を起こすことなく、可能な限り再生可能エネルギー源を活用できます。

マイクログリッドはメインの送配電網から独立した状態でも、接続した状態でも機能します。送配電網の故障や緊急時には、メインの送配電網から独立してスムーズに運転できます。この機能の重要性はますます高まっています。送配電網エネルギーへの依存を減らすため、現場の再エネ電気とあわせて、当社の製造現場でも利用を始めました。ドイツのフリードリヒスハーフェンにある当社パワーシステムズ施設のマイクログリッドはいま、通常時は1つの工場で必要なエネルギーの約3分の1、週末には必要なエネルギーのすべてを供給しています。

このほど、マイクログリッド・コンペテンス・センターをベルリンに立ち上げ、マイクログリッドの知見を大きく広げました。

データとデジタルツインを用いて、試験時の排出量を削減しています

7. データを低炭素ツールとして活用

デジタルの能力向上に伴い、時間とエネルギー、更には廃棄物の削減も増加します。試験を例にとってみると、ロールス・ロイスはデジタルツインを用いて大量のデータを取得することで、製品寿命を通じたエンジンの運転状況を予測しています。デジタルですでに得た結果を、実際の物理的な試験で検証することが増えています。つまり物理的な試験の回数が減り、不必要な排出を減らすことできます。

またロールス・ロイスのエンジンから得られるデータを使って、航空会社の使用燃料の削減にも貢献しています。天候や空港のオペレーション状況などのデータを分析し、航空会社と連携しながら、より効率的に燃料を使う運航に変えています。そのために、ゲート前での待機中に燃料の代わりに機内の電源を使用したり、あるいは効率的な運航ルートを推奨したりすることがあります。

同じ原理が、データにかかるエネルギー需要に応えるためにも使えます。ますますデジタル化する社会において、データ量は今後も爆発的に増加していきます。しかしデータは通信、交流、蓄積、処理のための電力が必要です。データセンターやデータ通信、データ処理は多くの電力を要します。ロールス・ロイスはデータ自体の持続可能性を高め、ますますデジタル化する社会の要求に応えるため、データの検証を始めました。

ロールス・ロイスの最先端の複合材テクノロジー施設では、非常に低排出のプロセスを使用

8. デジタルテクノロジーによる廃棄物の削減

設計と製造でより多くのデジタルテクノロジーを用いることで、廃棄物を大幅に削減できます。先端製造テクノロジーで廃棄物を削減する例として、英ブリストルにある当社の複合材テクノロジー施設では低エネルギーで排出量が非常に少ないプロセスのほか、最先端の自動製造方法や部品を使用しています。

ロールス・ロイスは2025年までに世界中で自社の25%の製造廃棄物を削減し、今年末までに無害廃棄物の埋め立てを廃止するという目標を掲げています。

仮想現実(VR)を使うことでエンジン設計の際の廃棄物を削減しています。これまではエンジン模型を作り、使用後は処分していましたが、エンジニアらはバーチャルでエンジンを開発できるようになっています。

エンジン寿命後(これは何十年にもわたります。当社で運用したエンジンの最長記録は35年以上でした)には、98%がリサイクルできます。そのうちの半分の部品は航空宇宙産業で再利用され、残り半分は使用条件が過酷ではないゴルフクラブや車などの部材に使用されます。

当社施設での再生可能エネルギーの利用を増やしています

9. 2030年までに自社の事業運営と施設でネットゼロを実現

自社施設への投資を通じて、事業運営における環境への負荷を減らしています。2014年と比べ、世界中で自社のエネルギー使用量を26%削減しました。2030年までに事業運営におけるネットゼロエミッション(排出量実質ゼロ)の達成を目指します。

当社施設における再生可能エネルギーの利用も増やしています。シンガポールの当社セレター・キャンパスでは屋根と駐車場に1万1,700枚の太陽光パネルを設置しました。この太陽光発電の取り組みを通じて長期的には、3万9,000トン以上の二酸化炭素(CO2)を削減する見込みです。これは4,770台分の自動車を道路上からなくすこと、あるいは150万本分の植樹に相当します。

また、埋め立て地に送る廃棄物の量を2014年と比べて70%削減し、その記録を伸ばし続けています。英ダービーの最新テストベッドの建設では、全ての廃棄物の98%をリサイクルしました。

エンジニアらが、ロールス・ロイスの製品の性能と効率を日々向上させています

10. ネットゼロに向け、世界の優秀な人材を活用

ロールス・ロイスのエンジニアは専門知識と経験を活かし、製品の性能と効率改善に日々取り組んでいます。当社エンジニアらは、英国の特許申請者リストでは常に上位を占めており、その中には各領域で高度な専門性を持ち世界中に展開する当社人材のネットワークであるアソシエイト・フェローが含まれています。

しかし、ある1つの会社や国だけでこの問題は解決できません。

世界の気温上昇を1.5度に抑えるには、業種や国境を越えた構造的な変化が必要です。ロールス・ロイスは、大きな変革を必要とするさまざまな国や業界との強い連携を持っており、世界中の同業他社や各国政府、学術界と協力し、コンソーシアムや業界団体、顧問委員会、専門家会議の一員を務めております。世界的な連携がなければこの野心的な目標を達成できませんが、協力することでネットゼロを実現できると確信しています。