ロールス・ロイスは、オーストラリア連邦科学産業研究機構(CSIRO)と一緒に、世界のあらゆる場所で大気中のCO2を直接回収する(DAC)新しいシステムを開発しており、来年には実証システムが完成する予定です。実証システムが年間に回収できるCO2の量は世界全体のわずか0.0000003%ですが、それでも同プロジェクトのチームメンバー全員が通勤で年間に排出するCO2の大部分を除去できる量です。
この実証システムは高さ約10メートルで、英ダービーにある当社工場の航空機エンジンの試験施設が一杯になるほどです。テストベッドを準備し、すべての材料を注文し、システムを構築するだけで約1年はかかります。さらにもう1年かけて、細かい動作を確認する試験を行います。
このシステムは空気を吸い込んでCO2を吸収し、水性の液体を使って約50%のCO2を除去して大気中に放出するという、巨大な肺のような働きをします。また、除去したCO2は貯蔵したり、他のプロセスで使用することができます。
他のDAC技術では、多くの水とエネルギーが必要なことが課題となっています。私たちのシステムは、水分をほとんど失わず低温で液体をリサイクルさせるため、低炭素エネルギー源を使って簡単に加熱することができます。
DACの開発を進めるに際して、化学に強いCSIROと複雑なシステム設計の経験を持つロールス・ロイスは最適な組み合わせと言えます。特に、ジェットエンジン製造の経験を持つ私たちは、CO2除去に欠かせない、大量の空気を効率的に動かす技術をもっています。
2021年、私たちは実証機を設計する資金を獲得し、2022年7月8日に発表された新たな300万ポンドの資金獲得によって、ロールス・ロイスのダービー工場で建設を開始することになりました。
あらゆる実効性の高い気候変動モデルは、二酸化炭素の排出を減らすだけでなく、DACのようなネガティブエミッション技術によって、すでに大気中にあるCO2の除去が必要であるとしています。この実証機をスケールアップして本格的に実用化されるようになれば、年間100万トン(年間排出量の0.003%に相当)のCO2を除去することが可能です。英王立協会は、英国が気候変動に関する公約を果たすためには、2050年までに年間2,500万トンのCO2を除去する必要があると見積もっており、国際エネルギー機関(IEA)は、地球温暖化を1.5℃に抑えるためには、世界中で年間9億8千万トンを除去しなければならないと予測しています。
気候変動に対応するため、今後30年の間に私たちが世界全体でやらなければならない課題はあまりにも大きく、そのスケールに気が遠くなる思いがします。脱炭素社会の実現に向けたさまざまなソリューションの開発に取り組むロールス・ロイスでは、同じく排出量削減に取り組んでいるさまざまなパートナーとも連携しています。