ロールス・ロイスのチームは、製造業の研究開発機関である製造技術センター(MTC)で働く医師やエンジニアとともに、わずか1週間足らずで、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の飛沫(ひまつ)感染リスクから最前線で働く医療従事者を守ることを目的としたシールドを開発しました。短期間で進められたこの取り組みは、英政府機関「イノベートUK」からの助成金により実施されました。
今回開発したシールドは、医療従事者が新型コロナウイルス感染症患者に人工呼吸器のチューブを挿管・抜管できるよう設計されたもので、可視性が高く、視界を妨げない点が特長です。医療従事者が患者に接近して作業する際、固定式バリアによって感染から保護されます。
ロールス・ロイスのプログラム責任者であるアンディ・ヨークは、次のように述べています。この取り組みは、バーツ・ヘルス・NHSトラストの放射線科医で友人でもあるイアン・レンフルー博士と、NHSが直面している課題や支援案についての会話から生まれました。そして、NHSで働く医療従事者を保護する専用シールドを提供するため、未曾有の事態の中で、協同して作業を進められたことを非常に誇りに思っています。
MTC、医療従事者、ロールス・ロイスからなるチームは、既存の医療規制やガイドラインの枠組みの中で、イテレーション(試作品作りと試験を反復して製品を改善する手法)を使って5種類のシールドを開発しました。開発にあたっては、ロンドンのロイヤル・ロンドン・ホスピタル、ノースウィック・パーク・ホスピタルはじめ、ブリストルのソースミード病院、コヴェントリー、ブリジェンドのプリンセス・オブ・ウェールズ病院で働く医療従事者からの協力を得ることができました。新型コロナウイルス感染症以外の治療において、患者の合意を得た上で麻酔科医立ち合いの元、いくつかのシールドのテストを行いました。
MTCとのパートナーシップマネージャーを務めているアラン・パルドーによると、最初の2日間で初期試作品の開発・製作を完了させました。イアン・レンフルー博士とその同僚がシールドのテストを行い、それに基づいてMTCが運用効果を向上する修正に着手しました。週末の残りの時間を使って試行錯誤の後、試作品を段階的に進化させ、最初の実用型MK4 挿管用シールドを完成させました。わずか6日間で、バーツ・ヘルス・NHSトラストのロイヤル・ロンドン・ホスピタルへの納品までを成し遂げたのです。
MTCの最高責任者であるクライブ・ヒックマン氏はシールドのメリットを次のように説明しています。このアクリル製シールドには、医療従事者が患者に接触できるアクセスパネルが取り付けられており、完全なユニットとして製造することも、箱に入った組み立て式のキットとして製造することも可能です。短期間の開発中に試験を行い、何度も設計変更が成されました。医療従事者のフィードバックにより、挿管・抜管中にも使用できるものとなり、さらに新型コロナウイルス感染症以外の医療シーンでも活用できるものとなりました。
ロールス・ロイスの製造技術ディレクターであるニール・マントルは、イギリス国内の麻酔科医や病院からの需要に応えるべく、開発チームはフルスピードでシールドの生産にあたっているとし、「驚くほど短時間に、開発のアイデアから生産を実現させたチームに、心から感謝の意を伝えたい」と述べています。
MTCは1,000個のシールド生産に向けた準備を進めており、開発チームはサプライチェーンとともに、少なくともNHSの必要数である1日200個の生産能力を実現すべく努力しています。
挿管用シールドを製造できる国内・国外企業のため、デザインはMTCのウェブサイト(英語)にて公開されています。