未来へようこそ

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ロールス・ロイス、未来システムシミュレータ(FSS)を通じて、デジタルの力を次のレベルへ

ロールス・ロイスは航空業界のパイオニアとして、航空の効率性と持続性を次のレベルに引き上げることに力を入れています。航空業界が直面しうる様々な重大問題を解決すべく、英国クランフィールド大学の航空統合研究センター(AIRC)において、創造力豊かなロールス・ロイスの社員らがソリューションを模索しています。

そうしたソリューションの一例が未来システムシミュレータ(FSS)です。外見は巨大なゲーム機のようですが、未来の飛行を研究するためにロールス・ロイスが開発したデジタル技術の中では、最も優れた製品の一つと言えます。

FSSは未来の推進システム、制御、サービスを仮想環境で運用できる操縦室プラットフォームです。FSSを使った既存の航空機や次世代航空機のシミュレーションを通じて、ガスタービンとの統合の可能性を最大限に模索することができます。また、より一歩進んだ形でのデータ活用も可能です。

既にお客様との作業も始まっており、シミュレータは直近の製品開発を支援するほか、パイロット1名体制の時代への移行や、推進システムの電動化への研究にも役立っています。

ロールス・ロイス民間航空部門の持続性戦略には、ガスタービンの最適化、動力システムの改善や航空機との統合、電動化のような革新的推進技術という3つの柱があり、FSSはいずれにも関係しています。新たなデータ活用方法という点では、FSSは製品、サービス、デジタル技術が互いに切り離せないものになるという、ロールス・ロイスのエンジンのビジョンにも貢献します。

統合と協力

ロールス・ロイスでシステム構築を担当するピーター・ビークロフトは、機体と推進システムをそれぞれ個別に最適化していた時代は過去のものとなるとしています。「既に、機体とエンジンの統合から得られるメリットに基づく技術が台頭しつつあり、こうした技術は未来の飛行にとってますます重要なものとなっています。そのため機体メーカーとの技術的協力を通じた、こうした技術の開発能力の重要性が増しています。」

英クランフィールドではエアバスのような業界パートナーと協力し、お客様であるエアラインの立場を理解し将来どのような航空機が求められているのかを考え、少なくとも実現には10年以上を必要とするような設計概念上のソリューションを生み出すべく研究に取り組んでいます。主要な研究分野にはエンジンとパイロンの更なる統合、発電機器の重量削減、航空機内部の電力配分の最適化などが含まれます。

ワイドボディ機用エンジンが大型化し、より大きなファンブレードやファンケースを持つに従い、パイロンへの取り付けも難しくなります。一例をあげると、ロールス・ロイスはUltraFan®実証エンジン向けに世界最大のファンブレードの製造を開始しました。このファンブレード一式は、現在のナローボディ機体と同等の直径140インチ(約355㎝)です。ファンブレードは縮小拡大が可能な製品ですが、FSSの仮想環境を使えば、フルサイズのファンブレードを航空機の主翼に取り付けるシミュレーションも実施可能です。

FSSは、ロールス・ロイスのeVTOLやACCELといった航空機プラットフォームの高度な電動化システム開発にも役立っています。ビークロフトは次のように述べています。「航空業界はハイブリッドや電動プラットフォームの設計では、創造性のルネサンス期を迎えていると言えます。非常に多くのコンセプトがずらりと並び、同様に動力や推進システムについても多様なコンセプトが生まれています。より革新的な提案の多くでは、推進システムが飛行制御の一部となっています。そのため、こうしたシステムの提供者として、シミュレーションを通じてシステムがどのように動作するのかテストできる事が重要になってくるのです。」

現在の航空への活用

FSS上で開発される技術は未来のプラットフォーム向けだけではありません。ガスタービンの性能や動作に関して現在の標準の指標よりもより良い情報を提供することにより、ガスタービンシステムとパイロット間のやり取りをよりよく理解することができます。また、燃料量を最小化する、あるいはエンジン寿命を最大化するなど、特定の飛行目的に合わせた最適なエンジンの使い方ができるような情報を提供することも可能です。

「FSSはタッチスクリーンで操作を行う非常に柔軟性の高いシステムで、ソフトウェアがモジュール化されているため、非常に忠実にエアバスA350型機、ボーイング787型機など既存の機体を再現できます。正確な機体プラットフォームやシステムを再現できることで、航空機へのエンジンの統合について、実際の統合や飛行試験を行う前に調査を実施し、質の高い試験を確信できるのです。」

データ活用を次のレベルに引き上げるという点では、既にパールエンジンシリーズ搭載の最も洗練されたエンジンヘルスモニタリング(EHM)によって業界をリードしていますが、FSSは操縦室における意思決定の強化(ECDM)というアプリケーションのソリューション提供を通じて、それをまた一歩先に進めています。

操縦室のエンジン表示はいくつかのアナログのパラメーターがデジタルになった点を除いては数十年間ほとんど変わっていません。これに起因する問題に対応するアプリケーションとして、パイロットが航空機の動力の状況をより良く把握し、乗員が十分な情報に基づいて、特に難しい事態に直面した際、より質の高い決断ができるよう作られています。具体例としては、エンジンが回復せずに停止してしまうサージング、バードストライク時に間違ったエンジンを停止させてしまうなどがあげられます。ECDMが活用できるのはエンジンに問題が発生した時だけではありません。離陸前に十分ウォームアップしているかといった確認も、長い運航時間を確保し製品の効率性を保つために重要です。

FSSはロールス・ロイスのインテリジェント・エンジンのビジョンが実現された代表的事例の一つです。このプラットフォームを通じて、エンジンは益々「つながり」、「理解され」、「状況認識され」たものとなります。未来の空へようこそ。