超音速飛行を持続可能にする取り組み

超音速飛行を持続可能にする取り組み

ロールス・ロイスは、世界最速の民間航空機を製造する航空宇宙企業のBoom Supersonicと連携し、同社のフラグシップ超音速旅客機「Overture」向けの推進システムについての検討を進めています。

Boomは最新の航空宇宙技術を用いて、超音速旅客機による飛行の新しい時代を築こうとしています。

当社はBoomと連携しOvertureの機体に適した推進システムを特定すべく、既存のエンジン設計が超音速飛行に適応可能か調査しています。

この取組みでは持続可能性を重視しており、超音速飛行の利便性を得ながら、当社の環境目標を達成することを目指しています。

超音速飛行は持続可能になり得るか?

超音速旅客機はネットゼロカーボンの未来と両立させなければなりません。当社はBoomと連携し、Overtureの設計や運用における持続可能性の実現に取り組んでいます。超音速飛行の技術的課題の克服を通じて、持続可能なイノベーションを加速させるチャンスが生まれます。

ロールス・ロイスの民間航空部門の戦略ディレクター、サイモン・カーライルは次のように述べています。「ロールス・ロイスとBoomは、超音速飛行と航空の持続可能戦略に対して高い関心を共有しています。我々のこの分野での豊富な経験やこれまでともに積み上げてきた研究を活かし、当社のエンジンテクノロジーをBoomのOvertureに上手く適応できるよう、改良をすすめています。」

多くの人にとって超音速飛行といえば、当時世界を驚かせたテクノロジー「コンコルド」を思い浮かべるかもしれませんが、航空宇宙技術はコンコルド開発以降、大きく進歩しました。特に、3つの分野のイノベーションがOvertureの燃費効率を大幅に向上させると考えられます。

  1. エンジン - 当社は50年前、世界初の超音速航空機コンコルドに4基のOlympus 593エンジンを搭載しました。このアフターバーナー付きエンジンは、設計当時は最先端の技術でしたが、その後長年にわたるエンジン技術の進歩がOvertureに活かされます。Boomと協力し、最も効率的な推進システムのため、さまざまな選択肢を検討します。
  2. 素材 - コンコルドはアルミニウムでできていましたが、Overtureは炭素繊維複合材を使用します。同素材は軽いだけではなく、空気力学的に最適な形状に変更することもより簡単になりました。
  3. 空気力学 - 先端コンピューティングにより、何千もの空気力学テストの繰り返しが可能になりました。コンコルドでは計算尺やコストのかかる風洞用模型を用いて設計していたため、最適化する能力に限界がありました。

超音速飛行への持続可能な航空燃料(SAF)の利用拡大も検討しています。ロールス・ロイスは、これまでの石油ガス業界との連携を活かしてSAFの利用を加速させ、Boomは、大気中の二酸化炭素から車や航空機の燃料を作っているPrometheus Fuelsなど持続可能性に取り組む多くの組織と連携及び支援を行ています。Boomは「商業航空用代替燃料イニシアティブ. (Commercial Aviation Alternative Fuels Initiative:CAAFI)」と「持続可能なバイオ燃料に関するラウンドテーブル」のメンバーとして、SAFの導入を進めており、持続可能性を最重要視しています。

超音速航空機は既存の亜音速航空機を補うものではなく、追加的な機材という位置づけとなります。そのためBoomは既存の航空機と取り合いにならないよう新しいSAF資源を調査しています。エンジン開発計画を通じて、多数のSAFの試験を実施する予定です。

当社の航空エンジンの大半はすでに、SAFの混合燃料を使用し、飛行しています。今後すべての新しいエンジンはおそらく100%のSAFで稼働できると考えており、その検証を行っているところです。

将来に向けて

ロールス・ロイスは新型コロナウイルスの環境下でも、航空を大きく変える将来のテクノロジー開発に取り組んでいます。次世代エンジン設計であるUltraFanも進捗しており、2021年の地上試験に先立って、エンジン実証の基盤もできつつあります。

Boomとの連携により将来の航空テクノロジーの更なる探究、持続可能なイノベーションの加速、航空の利点を享受し続ける方法を模索します。