ロールス・ロイスは、AI(人工知能)倫理に関して2つの革新的なツールを発表しました。これらの対策はAI技術に対する信頼の拡大に貢献し、ひいてはインダストリー5.0と呼ばれる次世代の産業革命を促進する可能性があります。
1つ目は、AI導入前に検討すべき判断条件からなるAI倫理フレームワークです。企業や組織は、特定の問題解決にAIを活用すべきかどうか精査する際のガイダンスとしてこれを活用し、そうすることで、社会への影響、ガバナンス、信頼性の観点からAI活用の倫理性について抜け目なく検討をすることができます。産業分野でのAI倫理への取り組みが、理論を超えて実用化されるのは今回が初となります。
2つ目はこのフレームワーク内で、AIアルゴリズムから得られる結果の信頼性を保証するための、5段階のチェックシステムです。同プロセスでは刻々と変化するアルゴリズムそのものではなく、AIのアルゴリズムから得られる結果に着目しています。アルゴリズム中のバイアスが検出されないまま開発が進むことを防ぎ、もたらされる結果を常に監視することで信頼性を確保します。
これらの倫理フレームワークと信頼性保証プロセスは、自動車、製薬、学術、政府機関の専門家のみならず、複数の大手IT企業の専門家の相互評価(ピアレビュー)を受けています。いずれもクリエイティブ・コモンズ・ライセンスのもと、Rolls-Royce.comのウェブサイトで年内に無償で全容を公開する予定です。
ロールス・ロイスの最高経営責任者のウォーレン・イーストは、ロンドン・テックウィークのAIサミットでの基調講演で、次のように述べています。「今回の調査結果を発表することで、AI倫理の問題を概念やガイドラインの議論から、如何に倫理的に適用するかという手順へ前進させたいと考えています。AIへの信頼を醸成し、私たち社会が許容してこそ、AIのすべての恩恵を受け、AIが私たちの生活や仕事のパートナーとなることができます。 当社はパートナーシップを通じたイノベーションを推進しており、今後も主要なステークホルダー、顧客、カウンターパート、主要IT企業に当社の取り組みを詳しく共有し、社会の発展のためどのように協力しあえるか検討したいと思います」
ロールス・ロイスは世界有数の産業テクノロジー企業であり、30年以上にわたり高度なデータ解析を適用し、1999年以降はAIを活用したリアルタイム・エンジンモニタリングサービスを提供してきました。
今回のツールは、重要部品の検査にロボットの活用が提案された際、品質保証の問題を検討する中で生まれました。ピアレビュープロセスを通じて、意思決定に関わる倫理フレームワークと信頼性プロセスはいずれも新しいものであり、AIのすべての用途に適用できる可能性があることが明らかになりました。なお、このAI開発作業は、当社データイノベーション事業のR2 Data Labsが主導しています。
R2 Data Labsのグローバルディレクターであるキャロライン・ゴルスキー氏は、次のように述べています。「ロールス・ロイスのAI機能は、他社の製品やサービスに深く組み込まれており、あまり知られていません。AIの利用に関する現在の議論は消費者データや個人データの扱いに焦点が当てられていますが、私たちがAIの産業応用に根ざした課題に正面から取り組んで構築したこのフレームワークは、他の産業へのAI応用だけでなく、はるかに広い分野で役立つと信じています。まだまだすべきことは多く残されていますが、この研究を自由に利用できるようにすることで、世界中の大小さまざまな組織がAIを使って、良い、倫理に則った成果を出すために役立つことを期待しています。」