HMNZSアオテアロア

HMNZSアオテアロア

ハイブリッド電気動力推進システムをニュージーランド最大の艦艇に提供

ニュージーランド海軍向け、同国最大の艦艇「HMNZSアオテアロア」(排水量2万6,000トン)が就役します。主要任務は同国陸海空軍に対する、世界中での兵站(物資の供給)支援です。ロールス・ロイスはプログラム開始時から就役まで、特に艦艇の設計構想とハイブリッド電気推進システムの提供に深くかかわってきました。

韓国の現代重工業が建造した極地氷海船階級の兵站支援艦であるHMNZSアオテアロアは、南極大陸での運用のため、特別な防寒技術を備えて設計、建造されています。同艦はロールス・ロイスの設計構想に基づいており、画期的な波浪貫通型の船体を持っており、この船体デザインが海軍で導入されるのは、今回が初めてです。同艦の船首の形状により低水位に極めて強く、それにより燃費が削減できるため、排出ガスも低減し、艦艇の操縦性や耐航性が増します。

MTUシリーズ4000 発電機

HMNZSアオテアロアの就役は、ロールス・ロイスにとって重要なマイルストーンとなります。ロールス・ロイスは独特の船体デザインのほか、高度なハイブリッド電気動力と推進システムの提供及び統合において、中心的な役割を担いました。

世界有数の動力推進機器を駆使し、ロールス・ロイス初の海軍向けハイブリッド電力システムとなりました。

ロールス・ロイス動力推進システムの機器配置を以下に図示しています。

発電システムでは、4基のMTUシリーズ4000ディーゼル発電機が、690ボルトの配電盤に電力を供給し、電力管理システムがこれを制御しています。配電盤からは推進モーターとバウスラスター用のアクティブ・フロント・エンド・ドライブに電力が供給されています。これらすべてのシステム提供、統合をロールス・ロイスが担当しました。主要推進エンジンも、ロールス・ロイスの2基のベルゲンB33:45L9Pを採用しています。

世界有数の艦艇向け電力推進システム企業として、ロールス・ロイスは重要な発電と推進サブシステム統合も手掛けました。ロールス・ロイスにとって、アイスクラス船に必要な高い発電能力に対応する電力システムを統合するという難しい挑戦でしたが、南極近海での夏の寒い時期(12月~3月)に同艦の任務遂行を可能にするために欠かせない取り組みでした。HMNZSアオテアロアの前任の艦艇、HMNZSエンデバーにはこの能力がありませんでした。

今回、ロールス・ロイスはニュージーランド海軍に、多くの燃料削減運転モードを備えた最適かつ柔軟性の高い発電プラントを提供するハイブリッド電気推進システムを設計しました。MTUディーゼル発電機は、艦内のライトや配管などの設備や任務用システムに同時に電力を供給しながら艦艇を推進する能力があるため、燃費が大幅に削減され、排出ガスも限りなく低減されています。MTUシステムは、尿素SCRシステムを用いて厳格な国際海事機関(IMO)の第3次排出規則に準拠しているため、同艦の環境対応にも大きく貢献しています。また、このハイブリッド電気システムのもう一つの利点は、機械式動力の戦艦と比べて、保守費用が低いことです。

このプログラムの責任者である、ロールス・ロイス艦艇部門プログラム・マネージャーのリー・スケルトンは、次のように述べています。「このプログラムは、私の今までのキャリアの中でも、非常に楽しくやりがいのあるものでした。ロールス・ロイスは社内外問わず欧州やアジア各地のサプライヤーを集め、この統合プログラムを完成させました。今回得た経験を上手く活かし、新型フリゲート計画のバッチ2型(大邱級フリゲート)のプロジェクトにおいては、当社のMT30船舶ガスタービンの特別な一体型筐体の設計や製造、就役中のサポートを提供する現代重工業のエンジン機械部門(HHI-EMD)を支援してゆきます。」

HMNZSアオテアロアが今後就役するなかで、ロールス・ロイスがライフサイクルを通じた保守サポートを提供する可能性があります。ロールス・ロイス・オーストラリアは同地域の海軍顧客、特に新規就航する艦艇に対し、保守サービスを提供してきた多くの実績があります。

「でも今は、活動を始めるHMNZS アオテアロアの乗組員の皆様に、ロールス・ロイスを代表して、この言葉をお送りします。『fair winds and following seas(順風満帆な航海をお祈りします)』」

注記:
当初契約ではロールス・ロイスが海上補給システム、操舵装置、ラダー、Kamewaプロペラ、バウスラスターも受注していましたが、これらの機器は、ロールス・ロイスの商業船舶部門の売却を受け、コングスベルグ社へ譲渡されました。